ぺいちくのブログ

本と建築のブログです。https://twitter.com/paychiku

職業としての学問

マックス・ウェーバーの「職業としての学問」を読んだ。

職業としての学問 (岩波文庫)

職業としての学問 (岩波文庫)

 

 いつか読まないといけないとずいぶん前からリストにあったんだけど、ようやく図書館で借りて読んだ。

"自己を滅して専心すべき仕事を、逆になにか自分の名を売るための手段のように考え、自分がどんな人間であるかを「体験」で示してやろうと思っているような人、つまり、どうだ俺はただの「専門家」じゃないだろうとか、どうだ俺のいったようなことはまだだれもいわないだろうとか、そういうことばかり考えている人、こうした人々は、学問の世界では間違いなくなんら「個性」のある人ではない。"(P28)

「こうした人々の出現はこんにち広くみられる現象であるが」と続くんだけど、100年前のドイツやアメリカの風潮はよく知らないけど、今も似たような感じだなと思った。やっぱウェーバーが何度も言うように余計なことを考えず、個性も自我も忘却してザッヘ(仕事)に献身すべきなんだろうな。

 

建築をつくる者の心

村野藤吾の「建築をつくる者の心」を読んだ。

建築をつくる者の心 (なにわ塾叢書)

建築をつくる者の心 (なにわ塾叢書)

 

 何かで藤原徹平さんが勧められていたので、読んでみたら面白かった。

時代は1980年で、村野藤吾さんが亡くなられたのが1984なので最晩年。その年に大阪で「なにわ塾」という少人数で話を聞く会みたいなのがあったらしく(全4回)、それの録音をまとめた本。

参加者に建築関係者以外の人も入っているということで、あまりアカデミックな話になりすぎず(そもそも村野藤吾という人がアカデミズムから遠い人なのかもしれないけど)、具体的な仕事の進め方の話、クライアントや工事業者との付き合い方、事務所内での仕事の仕方など、他の建築の本ではあまりないような生々しい話ばかりで面白かった。

 

みらいめがね

荻上チキの「みらいめがね」を読んだ。アマゾンで買って読んだ(紙の本)。

みらいめがね それでは息がつまるので

みらいめがね それでは息がつまるので

 

荻上チキさんのラジオ「session22」は番組がはじまったときから全部聞いている(生では聞いてないのでpodcastもしくはラジオクラウドで配信されている内容のみ)けど、本ははじめて読んだ。いい本だった。僕に入ってくる情報はだいたいTBSラジオ日経新聞とたまに読む本に限られているので、その中でもsession22で扱われている内容はかなりの部分を占めているし(時間的にも内容の大事さ的にも)、自分の考え方にかなり影響を与えていると思う。

ラジオを聞いただけでは分からなかった、荻上さんがなんでこんな感じの人になったのか(いい意味で)、番組でたまに触れられる鬱のこと、家族のことなどが分かってよかった。中でもお母様とのエピソードは少し涙が出た。

 

心霊電流

ティーブンキングの「心霊電流」を読んだ。図書館にあった。

心霊電流 上

心霊電流 上

 
心霊電流 下

心霊電流 下

 

 スティーブンキング、久々読んだ。相変わらずの感じで面白かったけど、ちょっと長いなと思った。

先日ぎっくり腰みたいなのになって整体に行って腰に電気を当ててもらった時に、この本のことを思い出した。

住まいの基本を考える

堀部安嗣の「住まいの基本を考える」を読んだ。

住まいの基本を考える

住まいの基本を考える

 

 堀部さんの建築は好きで、作品集もだいたい買っていて、かなり参考にしている。僕が事務所を開設する直前に堀部さんのデビュー作の「南の家」と「ある町医者の記念館」を鹿児島までみにいって、20代でこれをつくれるってすごいなと思った(当時自分は30代前半)。

この本を読んでみて、パッシブデザインとかの温熱環境のことに文字数をかなり割いていたのが意外だった。他の本ではそんなに言ってなかったような気がするので。

この本でも書かれているように、木造の小住宅が建築の基礎で、でも住宅が一番難しかったりする。僕自身も住宅の設計が一番しんどいし、時間もとられるからあまりやりたくないなと思うこともあって、年1件が限度だなと今は思っている。ただ腕を磨くには避けて通れないような気もするので、できるだけおおらかなで理解のある人の住宅をやるようにしたいと思っている(結局クレームが怖いだけ)。最近は無垢の厚いフローリングを使いたいから余計に(質感はいいけど複合の塗装品と比べると傷とかつきやすいので)。

昨日本屋でいいなと思って衝動買いした丸山弾さんの作品集を昨日じっくり読んでたら堀部さんのとこの事務所出身だったと読んだ後に気付いて自分の趣味も偏ってるなと思った。

増補特装版 木造住宅パーフェクト詳細図集

増補特装版 木造住宅パーフェクト詳細図集

 

哲学の自然

中沢新一國分功一郎の「哲学の自然」を読んだ。

哲学の自然 (atプラス叢書03)

哲学の自然 (atプラス叢書03)

 

2013年の本だから少し前の本。震災や原発事故があったあとの話。石炭などは数億年前に地上にふりそそいだ太陽エネルギーが化石化したものだけど、原子力技術は、そうした太陽の力そのものを我が物にしようとする。核エネルギーは、太陽からの贈与なしで生きていくこと、人間が完全に自立していきたいという願望だといわれててなるほどと思った。

前にNHK梅原猛東浩紀が話を聞きに行くという番組があって、これも震災後の放送だったはず。梅原さんが言ってたことで印象に残ったのが、世界が近代化(西洋化)していく中で、西洋文明を取り入れなければ植民地にされた。一番うまく取り入れた日本で原爆と原発事故が起こった。それは西洋でも起こっていないことだといった内容。

最近すべてを計算しようとするのが間違っているのではと感じることがある。完全性とか予測可能性を追求すればするほど、想定外のことが起こった時に対応できなくなるというか。それに対抗するのは冗長性とか余剰とかになるんだろうけど、それもなんか違うような気もするし、諦めでもないし。

 

「死」とは何か?

シェリー先生の「死」とは何か?を読んだ。kindleで読んだ。

「死」とは何か イェール大学で23年連続の人気講義

「死」とは何か イェール大学で23年連続の人気講義

 

「死」についての哲学の本で結構面白かった。そもそも死ぬことは悪いのか、じゃあ不死はどうかなどと考えたらやっぱり死ぬのも悪くない。それならすぐ死んでもいいのか、いや早すぎる死はやっぱりよくない、といった具合に極端な考えを持ち出しながら、悲観的にも楽観的にもならず、穏健派の考えに落ち着くところがなんかよかった。

結局身も蓋もない結論の、台無しにしないように用心して生きるしかないってことになる。

先日みたドラえもんの映画、「のび太の月面探査機」でルカが最後に永遠の命を捨ててそのあとなんて言ったか忘れたけど、いつか死ぬからからこそ、頑張れるといったようなことを言ったような記憶があるんだけど、結局いろいろ考えたとしても、普通にそれしかないんだけど、考えて確認することも有意義だと思った。