ぺいちくのブログ

本と建築のブログです。https://twitter.com/paychiku

建築家とアーキテクトの間で

芸術家と建築家について考えてたら、そもそも建築家ってなんやねんと考えてしまって、ウィキで検索すると、建築家という名称について、

”法律上は、極小規模な建物を除き、建築士以外の者が設計や監理を行うことは禁止されている。また、建築士の資格を持たない者が建築士と紛らわしい名称を使用することは禁止されており、建築士でない者が自称建築家を名乗ることは法律のグレーゾーンとなる。”

とかいてあった。確かに、JAEICのサイト(http://www.jaeic.or.jp/apec_a-youken.htm)でも、

”日本においてアーキテクトに相当する資格は「一級建築士」です。”

ということになっている。

調べてみると、どうやらアメリカやイギリスなどの英語圏では「アーキテクト」は資格名になってるらしいし、なんだかよくわからなくなってきた。「建築家」の英訳は「アーキテクト(architect)」だったはず。「建築家」とは、職能なのか、ただの資格の名称なのか。そもそもarchitectの和訳は建築家で正しいのかどうか。

 

ちょっと整理すると

①建築家は芸術家に含まれる(たぶん)

②一級建築士の人でも設計はやっていなくて、現場管理や公務員など、いろんな仕事をしているひとがいるので、建築家と名乗る人と名乗らない人がいる(というか設計者でも名乗らない人がほとんどなのでは)

③建築家と名乗っていても一級建築士を持っていない人がいる

④海外ではアーキテクトは資格の名前になっていて、資格を持っていない人が名乗ることはできない

⑤そもそも建築家の英訳はアーキテクト(architect)で正しいのかどうか

 

ここまで考えていて思い出したのだが、日本にはJIA(日本建築家協会)というのがあった。ちょっとサイトをのぞいてみたらJIAで建築家資格制度というものを新たに設けたらしい。http://www.jia.or.jp/qualify/qualif_arch/panf.htm

これを読むと、現行の建築士制度に不備があるとの主張だが、これは一級建築士=建築家であるとはかぎらないという先述の②を問題にしている。

確かに建築の形態が景観に与えるインパクトは大きいので、建築を設計する人はそのことについてもっと意識的にならなければいけないし、形態の操作は慎重でなければならない。しかし、だからといって建築家協会の会員が設計したものならば景観にマッチしているといえるのだろうか。むしろ主張しすぎているものの方が多くなかったりしないだろうか。

紛らわしい名称があるのは問題だし、これで日本の建築がよくなるのならいいのだけれど、ここまで調べてだんだんどうでもよくなってきた(資格の位置づけをかえることで景観が良くなるとは思えない)。。。

やっぱり日本における建築家と海外のアーキテクトは若干違うのではないかという疑いを禁じ得ないので。日本の画家も彫刻家も政治家も「家」のつく名称はどれも資格と関係ない。

個人的には建築を設計する人(※1)は、トリックスターを演じたり、作家性を強く押し出すのではなく(アーティストのようにふるまうよりも)、もっとエンジニアリングを押し出すべきで、「美意識のあるエンジニア」のような人がたくさん増えればもっとよくなるのではと思う。確かにアートと建築の関係は否定できないし、そういったものには魅力があって、時には必要になるが、多くの建築は、「こうやった方が強いしきれい」、「こうしたほうが使いやすいしきれい」、といった感覚で正直につくられればいいのではないかと思う。技術に裏付けられた美しさというものがあると思う。

建築家に関するシリーズはこれでひとまず終わります(もうどうでもいい気がしてきた)。

※1 もちろんミケランジェロのような巨匠は除く。