森山高至の「非常識な建築業界」を読んだ。
僕はこの人のことを国立競技場問題がおこるまで知らなかったんだけど、この本に限れば結構いいことが書いてあるなと思いながら読んだ。
建築家=アーティストみたいな価値観だけになると確かにどうかと思うし、僕も槇さんのヒルサイドテラスみたいな建築がどちらかというと好きだけど、ヘンなとんがった建築もないとつまらないような気もするし、結局のところ多様性がなくなるのが一番つまらない状態だと思う。どんな建築がいい建築かについては、僕もずっと考えているけどまだ全然答えが出ていない。
アーティスト問題については、「アーティスト症候群」という本に書いてあるように、建築業界に限ったことではない。
こういった承認欲求みたいなものは、最低限のものがそろった時代にはどうしてもでてくることなんじゃないだろうか。ただ、個人の表現を公共的なものでやってしまうのがどうなのかということになるんだろうけど。 建築は専門家と消費者の情報の非対称性が大きい分野だと思うから、良心的であることが大前提なんだけど、表現建築家みたいなひとたちも、それが社会とかクライアントにとっていいことだと本気で信じてやっているからややこしい。ヘイトスピーチをやる人たちもそれが悪いことではなくて、いいことだと信じてやっているというのをラジオで聞いてなるほどなと思ったことがある。
この人みたいに一般の人に建築のことをわかりやすく伝えることも大事だけど、一般の人の方も、文化的なあごの力というか、分かりにくいものをかみ砕く力をつけないと、結局わかりやすい価値観の方に流されていってしまうだろうからなかなかあれだなと思う。
実際国立競技場のこととかは、でかいとか、お金がかかるとか、木を使うといい感じだとかそういったわかりやすい話ばかりになってしまってあれだったし。