ぺいちくのブログ

本と建築のブログです。https://twitter.com/paychiku

都市の〈隙間〉から まちをつくろう

大谷悠の「都市の〈隙間〉から まちをつくろう」を読んだ。

立ち上げ当初の不安定な時期を経て安定してくるとダイナミクスを失う、関わる人が増えるとトラブルも増える、「みんなの」とはいえ、「誰かの」ユートピアになってしまうと、他からみると誰かに占拠されている空間になる、等の指摘、分析は僕が今まで空き家を使ったまちづくりみたいなものに対するなんとなくもやっとしていたことをきれいに整理してくれていていい本だと思った。

やっぱりまちづくりに関わろうと思うと(この本にもかかれている通り)暇じゃないとできないと思った。自分は時間がなさすぎるし、建築士という肩書がグレーゾーンを許さない。事故があると責任をとらされる。こういった活動をやるために建築士の免許を返そうかなといった人に会ったこともあるほど。

この本にも書いてあったけど、最初は素人が自分のためにやる(DIYなら金はそこまでかからない)。少しづつオフィシャルな感じになっていくにつれて法適合の問題がでてくる(金がかかる)。僕が出ていくということはオフィシャルになるということなので金がかかる。省エネや耐震性のことと、良質なストック、空き家の利用についてはどう考えても矛盾するから本当に難しい。アドバイスを求められたら適合していないから適合させたほうがいいと言うしかない。結局は素人が自らやるしかない。こういった活動が都市に活力を与えているのはこの本を読むとよく分かるんだけど。

2010年代は日本でも空き家をなんとかしようとまちづくりワークショップが乱立した時代だったと思っている。コロナでそういったイベントは今はできないけど、今後はどうなるんだろう。少なくとも僕が住んでいる地域で行われたイベントはたいして効果がなかったようにみえる。この本にも書いてあるとおり、まずは自分たちのために空間整備する(子供が安全に遊べる場所がほしいとか)といった動機が先にないとだめなのかもしれない。それからすこしづつ規模が大きくなる。空き家をなんとかしないとという動機が先にあるわけじゃなくて。

そもそもドイツの東西統一(不動産価値の大きな動き)や難民問題(人口の大きな動き)がなければここまでになってないかもしれないと読みながら思った。そういった意味では日本は空き家は増えているけど安定しすぎているかもしれない。人口減少や高齢化は急激に進んでいると言われているけどこのドイツの事例ほど急激じゃない。