井上達夫の「リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください」を読んだ(kindleで)。
リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください--井上達夫の法哲学入門
- 作者: 井上達夫
- 出版社/メーカー: 毎日新聞出版
- 発売日: 2015/06/16
- メディア: 単行本
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へんなタイトルだけどいい本だった。反知性主義と同じように、リベラルの意味も使う人によって幅がある言葉のような気がするから、そもそもどういう意味なのか確認してみようと思って読んだ。保守とか新自由主義とかも雰囲気しかわからないのだけれども。しっかり読みごたえもあるけど、話し言葉なので分かりやすかった。
リベラル的なものの一つに弱者救済があると思うんだけど、これってこの本にも書いてあるように、「他者に対する行動や要求が、もし自分がその他者だったとして受け入れられるかどうか」なんだと思う。子供に「自分がされて嫌なことは人にもしてはいけない」教えるのと同じようなもので、単純な原則だけど。ただ、現実の社会では利益の取り合い、不利益の押し付け合いだから、なかなかうまくいかない。
それと、僕がしばらくどう考えたらいいのか戸惑っている多様性礼賛的なものや、価値相対主義についても納得のいく話が書いてよかった。僕は多様であればあるほどいいとは思っているけど、だからといってなんでもいいわけではないと、なんとなくは感じていて、そこから先をどう考えたらいいのかよくわからなかった。この本では「自己の価値判断に対する他者の批判の可能性を閉ざす点で、価値相対主義は、独断的絶対主義と変わりはない」と書かれている。批判的合理主義の立場をとれば、自分の主張を批判に晒して他者の批判が決定的ではなくても、自分の主張を修正したり、撤回したりすればいい。こうなってくると多様性もありながら、なんでもありではないということがよくわかる。
あと、意外だったのがこの人がサンデルに共感していること。なんとなくサンデルはリベラルとかとはちょっと違うのかなと思っていたんだけど、「なんでもあり」に対して、正義とか言い出したら確かにサンデルみたいになってくる。やっぱり、寛容=なんでもありではない。あたりまえだけど。