ぺいちくのブログ

本と建築のブログです。https://twitter.com/paychiku

村上春樹の「約束された場所で」を読んだ。

前に読んだアンダーグラウンド地下鉄サリン事件の被害者で、こちらはオウムの信者(元信者も含む)のインタビュー。

体調が悪かったのが、食生活を変えたり、運動(ヨガ)をしたり、仕事をやめたりしたらよくなるってのはありそうだなと思うんだけど、それでみんな割と簡単に出家してしまう。謎の終末観、ノストラダムスの大予言を信じたりして出家をしてしまう。

今の世の中の仕組み、現世と合わないひとはどうしてもいると思う。できるだけそういう人がいないような仕組みをつくったり、いたとしても置き去りにしないようにしないといけないんだけど、なかなか難しい。実際のところ、現世が間違ってることはたくさんあるだろうし、矛盾や欠陥だらけで理想が高ければ高いほど、正しく美しい理想郷に行ってしまいたくなる人もいると思う。でも現実には傷つき苦しみながら粘り強く変えていくしかない。

最後のほうにある河合氏との対談を読んで、キリスト教の原罪って結局何だったんだろうと気になって調べたけど、全然理解できんかった…。生まれた時点で原罪持ちで洗礼を受ければ原罪なくなるってのは、ほぼ脅しのような…。

リノベーションの教科書

共著「リノベーションの教科書」を読んだ。

学生向けの本だと思うけど、おじさんにもいい本だった。

最近うちの事務所も古い建物のリノベして別の用途にみたいなのが増えてきた。用途別に事例が載っていて、知らない事例で興味深いものも多く、よかった。

新築を自分が設計すると、特にフォーマット化しているわけでもないのに、手癖みたいなものがあって、似たような感じになってしまうんだけど(新たな試みはリスクも多く、前回のアップデートとするほうがいいことも多い)、古い建物のリノベーションだと、今どうやっても手に入らないような感じのものができたりすることがあっておもしろい。昔の建物のどこを変えてどこを残すか考えるのも楽しいし、変えるとしたらどこを変えるか、効果的な一手を考えたりするのもおもしろく、今は新築よりもいいなと思っている。

古い建物は図面がないから何度も現調にいって既存図の精度をちょっとずつ上げていくんだけど、手はかかるし大変なんだけど、古い建物と向き合うと、長持ちするものとそうじゃないものがわかってきて勉強になる。

なによりも無から立ち上げるプレッシャーがなくていい笑。

現代思想入門

千葉雅也の「現代思想入門」を読んだ。

千葉雅也のほかの本も読んだことあるけど、ほかの本は読むのが難しかったりしたけど、この本はすごく読みやすかった。多分大学生向けに書いてある。

建築を勉強しているとなぜか現代思想の話になることがよくあって、前提条件としてその辺を押さえておかないと意味が分からないなと思って、学生のころに無理していろいろ読んだ。デリダフーコーバシュラール、レヴィストロース等、著作をそのまま読んでも意味わからんかったけど、日本の研究者が書いた新書を頼りに断片的に理解していた(それでも多分1/10もわからんかった)。この本は入門のためのガイドみたいな役割を意識して書かれているんだと思うけど、建築家が意味わからん文章を書いているのを理解する程度であればこれだけ読んだだけでもいいような気もするぐらい充実していた。それくらいいい本だった。

僕はこの本の中ではフーコーの話が好きだなとおもった。キリスト教世界の誕生によって、「やってはいけないこと(やってはいけないことをやってしまうかもしれないという闇)」の罪の概念が生まれて、個人、罪の意識、が生まれてこれが最近の妙な自己責任とかにつながると思うんだけど、それより前の人間(古代人)のことを意識すると、もっと自己本位で罪責性に至らない自己管理ができるのではということ。要はあまり内面にこだわりすぎたり、変に反省しすぎたりしなくてもいいのではということかなと受け取った。もっと自分なりの秩序付けがあってもいい(逆にそこはちゃんと考えたほうがいいかも)。この辺は前に読んだ國分功一郎の「責任の生成」の話とつながる。

有限化と逸脱の話もおもしろかった。僕も自分で自分のルールやルーティンを決めて縛りがちなんだけど、そのほうが快があるからなんだろうなと思った。会社員じゃないし、なにも決められてないから、逆にそれがなかったら逸脱だらけでわけわからんくなるんだと思う。

アーバニズムのいま

槇文彦の「アーバニズムのいま」を読んだ。

槇文彦のことは僕が学生の頃から著作や彼が設計したヒルサイドテラス等に触れて、全面的に信頼できるなと思っていたし、誠実に建築と向き合われてると思っていたけど、新国立競技場のことがあってからちょっとよくわからなくなっていた。

何がいい建築なのか言葉で説明するとなるといまだによくわからないけど、ヒルサイドテラスやスパイラルなどはいきいきと使われていて本当にいい建築だと思う。

この本の中ではヒューマンな建築と書かれていたけど、そういったことは分かりにくいし、なかなか伝わりづらいと思う。

この本の中では<情景>をつくれるか、「現実のデザインされた姿に生命を与えるのに失敗している例をあまりにも多く目撃する」と書かれていた。SNSが普及してから写真映えするものがより広がって、なんかひどく単純化されているような気がするけど、もっと複雑でわかりにくいままでもいいのかもしれない。

最近自分が設計したものでいきいきと使われているか、そうじゃないかは自分の設計の問題というよりも、利用者側(運営側)の力のほうが大きいような気がしていたけど、まだこっち側にできることがあるかもしれない。ただ、自分のスタンスとしては設計の業務を超えたことはあまりやりたくないし、やるべきでもないとも思う(運営側に入ってしまうことは避けたい)。

建築の難問

内藤廣の「建築の難問」を読んだ。

内藤廣の本は出たらだいたい買って読んでいるから今回も買って読んだ。今回の内容は東日本大震災以降の活動の話で、読んでいて自分はこういったことがあったとき何も役に立てないかもなと少ししんどくなった。あとがきで内藤さん自身も触れられているけど(P269)、どんな災害(あるいは侵略戦争)の被害に心を寄せて心を痛めても、当事者の気持ちにはなりきれない。この辺のことに対するレスポンスは小説やドラマ、映画のほうがまだなにかヒントがあるような気がする。

最近建築の読み物を読むのがなんだかしんどくなってきた気がする(特に建築家が書くこいういったエッセイや論集)。彼らがこうあるべきと書いていることと自分がやっていることのギャップもあるし、自分がやってることが正しいと思えるほどの自信もない。単にこういうのを読みすぎて食傷気味、新たな発見がないか、自分が疲れていてコンディションが悪いだけか、その全部か。

内藤さんは建築家が行政に業者として扱われることが大嫌いなんだけど(P191)、僕は別にそれでもいいかなと思っている。もちろん僕も仕様書通りにやるだけじゃなくて、業としての仕事を超えて少しでもいいものになるように頑張っているつもりなんだけど。この辺はあくまで発注の形式上の話であって、行政とは互いに尊重しあって一緒にいいものをつくろうとしていると感じている(少なくとも自分側は)。それは僕が田舎でいつも決まった市町の担当者たちとやってるから関係性ができてるだけで、都会やコンペで取ってはじめての市町とかだと難しいのかもしれない。

誰かがやらないといけない雪かきのような仕事が建築設計業界にもあって、僕は結構そういうのを業として過不足なく手際よくやることにやりがいすら感じている。意外と難しいことも多いし、毎回新しい問題にぶつかるくらいに建築の設計は範囲が広い。

最近割と自分の仕事に対して、しゃれたもの(意匠的に)を求められることが多くなってきて、それはそれでうれしいんだけど、自分は大しておしゃれでもないので、どうしたものかなと思っている。おしゃれなものを期待されている中で、成果を出すのは難しい(ハードルが上がっている)。たいしてそういうのを求められてない中で、割と気が利いてるやん、といった感じでやってきたのでこれからもこれでいきたいんだけど…。そういった意味ではハードルが上がりきってる中で頑張っている人たちはほんとにすごいなと思う。

こういう本を読むのしんどいと書いたけど、もちろん励まされることも多い。コロナで建築を見に行くことが減ったけど、いい建築をみたら励まされるのでそろそろ何か見に行きたいなと思う。(建築が人を励ますこともあるとこの本のあとがきにに書かれているP275)

 

人を動かす設計術

香山壽夫の「人を動かす設計術」を読んだ。

香山さんの本を久々に読んだけど、最近の建築はいかがなものかみたいな内容が増えてきたと感じた。それは別に香山さんが老害になったからというよりもほんとにいかがなものかといった流れになってしまっているからなのかもしれない。少なくとも僕にはそう思える。

何がいいのかよく分からなくなってくるけど、分かりやすい表現にはしるよりも、分かりにくいけどいいもの、いいと感じたものに近づけたいなと思う。

少なくとも保存設計については

「第一に、既存の建物の特徴を生かすこと、そして、第二に、新旧の部分が調和していることという、誰にもわかる平明なことなのだ。保存設計の要点は、既存の建物の特徴を生かしつつ、新しくしていくことにつきる」(P177)

とこの本にも書いてある通り実は分かりやすい。僕が保存設計の仕事を増やしているのもこの辺があるからなのかもしれない。

サウナをつくろう

沼尻良の「サウナをつくろう」を読んだ。

紙の本がほしかったけど、kindleしかなかった。

サウナが流行ってて、ブルータスとかでも特集が組まれてる。中でも小規模でプリミティブな薪ストーブ式のサウナ小屋みたいなのが流行っている。うちにも依頼が来て、正直あんまりやりたくないけど、ひとまず勉強のためにこの本を読んだ。

サウナの歴史とか、そもそもサウナとはといった話、詳細図や細かい仕様を含めた実例が載っていて、数少ないサウナの資料になっていていい本だと思った。

しかし読めば読むほど、サウナの設計は難しいし、いい加減な設計はできないなと感じた。薪ストーブ式のサウナ小屋は慣れていない人が扱うとどう考えても事故になりそう。ネットで検索してみても最近の事故の記事が出てくる。火事も一酸化炭素中毒もこわい。やっぱ設計断ろうかなー…。(プリミティブな小屋の設計は好きなんだけど…)