大野左紀子の「アーティスト症候群」を読んだ。
アーティスト症候群---アートと職人、クリエイターと芸能人 (河出文庫)
- 作者: 大野左紀子
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2011/07/05
- メディア: 文庫
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なんでみんなアーティストになりたがったり、歌手がアーティストとよばれたり、謎の肩書きを名乗ったりするのかといったことを追求した本。
肩書き論ではこれが決定版なんじゃないかと思う。
著者自身も芸術家だったらしく、現代アートについて僕が謎だと思っていたこと、芸大受験のことからどうやって活動を続けていくのか、価値はだれがきめているのかなど、詳しく書かれていておもしろかった。
僕がかねてから気になっていた「建築家」という言い方についてもかかれていて、〇〇家や〇〇士、〇〇師などと比較されていてわかりやすかった。簡単に言うと〇〇家は仕事であくせくやっているわけじゃなくて、ライフワークですからみたいなスタンスの人のことみたい。医師、弁護士、建築家は海外とかではよく並べられるみたいだけど、日本語だと、全部ばらばらだなと思った。
僕個人としては、〇〇家みたいなふわっとしたものよりも、〇〇士とかのほうが職務に忠実な侍のイメージでかっこいいと思うんだけどな。
全体的な話にもどると、〇〇アーティストとか〇〇家とかには普通とは違うといった底上げ感が漂っているという理由で採用されていることが分かった。
最近はさらに「建築家」とはちがうのだという表明のために、ソーシャルアーキテクトとか、建築エコノミストとかコミュニティデザイナーとかいろいろあるけど(最近建築コミュニケーターというのがあるのを知った)、知らん人からすれば、余計分かりにくくないなと心配になる。いろいろでてくるのは社会が成熟してきたと好意的にとらえたいけど。
僕自身は自意識が邪魔をして「建築家」とは決して名乗らなくて、せいぜい建築士だよってぐらいで、設計したものをみてもらえればだいたいどんなことをしているか分かってもらえそうだけど、つくるプロセスとか、市民参加とかに力点を置いている人たちだと、ちがう呼び方の方がふさわしいのかもなと思うこともある。まあ、プロセスに力点をおいた「建築家」でいいような気もしてきたけど…