ぺいちくのブログ

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化学革命

内藤廣さんの「形態デザイン講義」を読んだ。

形態デザイン講義

形態デザイン講義

 

 東大講義を収録した構造デザイン講義、環境デザイン講義につづく第三弾。

このなかの「化学革命というバケモノ」のところが印象的だった。

1960年代に化学材料(主にプラスチック)がたくさん出てきて僕たちの生活を覆った。僕はまあプラスチックとかが出てきたのはいいと思うけど、それが木目調とか石目調とかに擬態するのに関してはなんだか気持ち悪いなと思ってます。

僕が設計事務所で働きはじめたときにびっくりしたことのひとつに、カタログの多さがありました。本棚のほとんどがカタログで、どういったメーカーがあって、どういう建材をつくっているか、把握するのにとても時間がかかりましたし、いまだにどういったときにどれを選べばいいか迷うことが多いです。今は僕なりの定番をつくっていますが、つかったことのない材料をつかうときは慎重に選ばないといけないし、メーカーや商品の多さに困ったりもします。

この問題は確かに60年代からはじまったことで、それまでは建材がそこまで工業化されていなくて、近くの鉄工所や木工所でつくれるもので建築ができていたのではと思います。そのころのほうが設計は自由だったのではと思ったりもします(今はそんなことをすると高コストになる)。材料が工業化することで、工期が短くなったり性能が安定したりいいこともたくさんありますが、既製品に設計が縛られるという不自由さもあります。

既製品の中でも、メラミン化粧板の木目調や、窯業系サイディングのレンガ調、石目調などは僕が独立してからは使ったことがありません(サラリーマン時代は何度か違和感をもちながら使ったことあります)。内藤さんの本にも書いてありましたが、メラミン化粧板も最初は白とかグレートかプレーンな単色だけだったのが、それではどうも受けが悪くて木目調とかがでてきたとか。白の単色のメラミン化粧板とかなら僕も結構使っています。木目調という、何かに似せた媚びた感じになるとどうも苦手だし、こういった化学材料は最初が一番きれいで、時間とともに味わいがでるということはないので、あまり使いたくないなと思います。樹脂は樹脂らしく、セメントはセメントらしくその質感そのままでいいのではと思います。なんで何かに似せる必要があるのだろうか。おそらく60年代までの建材は何とか調みたいな材料はなかったはず。石は石のままで、木は木のまま。

実はこの辺の話と、ブルータリズム(僕が最近妙に気になっているキーワード)がつながっているとこの本を読んで気づきました。